48 鐘の音きくと菅公の

本日も「鉄道唱歌の話」にご乗車ありがとうございます。

 

鐵道唱歌 山陽、九州 四八

 

鐘の音きくと菅公の

詩に作られて觀音寺

佛も知るや千代までも

つきぬ恨の世がたりは

 

 

かねのねきくとくわんこうの

しにつくられてくわんのんじ

ほとけもしるやちよまでも

つきぬうらみのよがたりは

 

 

これも菅原道真漢詩「不出門」に詠われています。

 

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不出門

 

一從謫落在柴荊

萬死兢兢跼蹟情

都府樓纔看瓦色

觀音寺只聴鐘聲

中懐好逐孤雲去

外物相逢滿月迎

此地雖身無檢繋

何爲寸歩出門行

 

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不出門

 

一たび謫落して 柴荊に在りて從り

萬死兢兢たり 跼蹟の情

都府樓は纔かに瓦色を看

觀音寺は只 鐘聲を聴く

中懐は好し 孤雲を逐うて去り

外物相逢うて 滿月迎う

此の地身に 檢繋無しと雖も

何爲れぞ寸歩も 門を出でて行かん

 

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一たび配流され粗末な家に住んで以来、罪は万死にあたる思いで恐れおののき、ただひたすら謹慎してきた。

都府楼はわずかに瓦の色を眺めるのみ、観音寺も鐘の声を聴くだけである(訪れたこともない)。

心の中はただひとひらの雲を追っていくようだが(都への思いが募るが)、外部にに対してはただ満月のような心を持ちたいと思う(不平を抱かないようにしたいと思う)。

この地では束縛を受けることはないといえども、(左遷された身の上なので)どうして一歩たりとも門の外に出ることができようか。

 

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 ≪観世音寺 講堂≫

 

観世音寺は670年ごろに創建されたとされ、現在は天台宗の寺院となっています。

大宰府の庇護のもと九州の寺院の中心となり「府の大寺」と言われました。

 

現在の講堂と金堂は江戸時代に再建されたものです。

 

 

 

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 ≪観世音寺 梵鐘≫

 

菅原道真の詩に詠われた梵鐘は奈良時代の製作で、国宝に指定されています。

 

都での政争に敗れ、この地に左遷されてきた道真。

大宰府という九州の内政・外交・国防を統括する重要な役所のそばにいながら、なんの権力も与えられず、ただ瓦を見るだけ。

衣食にも事欠き、粗末な屋敷から一歩も出ずに観世音寺の鐘を聴く、道真の心中はいかばかりだったでありましょうか。

 


 

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